专辑简介
ミュージシャン:
ボーカル/アコースィック・ギター:友川かずき
ピアノ/アコーディオン/マンドリン:永畑雅人
パーカッション:石塚俊明
ギター:金井太郎
プロデューサー:生悦住英夫
エンジニア:吉田武司
アート・ディレクション:荒井康祝
録音日:2000年2月21日
録音場所:White Road Studio
昨年たまたま見つけたホームページで「私の好きな詩人」アンケートというのをやっていて、そこで友川かずきは20位以内にランキングされていた。総サンプル数は約1000件。文学研究者や文芸評論家らの間ではあまり話題にならない男の名がこうして上位にランキングされるというのは、おもしろい現象ではないだろうか。これはもちろん彼の詩が稚拙だということを意味しているのではない。古語混じりの、象徴やオノマトペの技法が駆使されたそれは高度な文芸作品であり、時にはむしろ難解ですらある。
にもかかわらず、彼の詩が一般の人々に支持されているのは、なぜだろうか。
それは、一つには彼の詩が無数の個に向けて放たれたものであり、一つには庶民的と言ってもよい顔を持つ彼が、「大人」という他者によってあらかじめ用意された物語=小市民的な幸福を犠牲にして作品を創造しているからだろう。酒も飲めば、博打も打つ。手料理に凝ることもあれば、アパートでメダカを飼っていたり、パセリやポリアンなどの植物を育てていたりもする。
音楽活動25周年を記念して3枚組のCD「星のプロセス」が発売されたのが一昨年のこと。その頃から今日までの間に、コンビニでCDを買えるほど、音楽は人々にとって身近なものになった。これは、よいことなのかもしれない。だが、それだけ有り難みが薄れてしまったような淋しさもある。このような状況の中で、友川かずきは音楽を聴くことを、それと馴れ合うことを避けるかのように習慣化しようとはしない。そのような彼が知っているギターのコードは、Am、B7、C、D、Dm、Em、F、Gくらいのものだ。ところが、私たちはこれらのコードを押さえても、彼と同じ響きを奏でることなどできはしない。そして、その理由は、彼がカポタストを用いていることだけにあるのではなさそうだ。
彼は、存在の、現象の、世界の、本質しか見ようとはしない。凍てついた修羅の眼と、柔らかな聖母の指でそれに触れた言葉だけを掴みとる。
その唄に感応することは、自分自身の内なる声に耳を澄ます神秘的な体験でもある。私は信じている。この内なる声に従うことによって、私自身のオリジナルの物語を創造し、私自身を無視しがちな私の人生に、血を通わせることが可能になると思うのだ。今回、お馴染みの中也とともに登場する作家たち、葛西善蔵や釋迢空(折口信夫)も、そのような人々であったはずである。
あなたに、私に、棄ててとび込む火はありや。
(「赤いポリアン」ライナーノーツより)