蝉時雨 - みとせのりこ (Mitose Noriko)
一人立ち尽くしてた
赤い闇の中で
軋む振り子の響き
褪せた時間
他愛ない微笑みも
祈ることばさえも
あの夏影の底に埋めてきたの
舞いおちる花のように
夏を葬送る聲たちよ
光も木々のざわめきも
人の足跡さえ
すべて覆い尽くして
鎮魂めるのなら
わたしのユメも哀しみも
よろこびも痛みも
すべてを忘れさせて
眠らせてこのまま
浅い睡ろみの中
繰り返し視るのは
不確かなぬくもりと鈍い記憶
照り返す花の色
思い出せない唄
つまさきをすりぬける
逃げ水のよう
遠ざかる鈴の音と
揺らぐ眩暈鮮やかに
真昼の土に灼きついた
細い脚の影と
今も葉陰に残る陽炎のように
わたしの罪もなきがらと
傷痕も名前も
すべて奈落に埋めて
眠らせてこのまま
真夏の淵に枷がれと魂の軛と
錆びた睛の上に降りそそぐ欠片
わたしの罪もなきがらと
傷痕も名前も
すべてをその手で眠らせて
このまま
深い夏の底に