小豆色のコート
イチョウの葉が撫で
戸惑い気に落ちる
ベロウズポケットに
耳鳴り残して
ひと気のない町に
煙を吐いた
寝息を立てる三毛猫は
青い水の中
珊瑚礁のベッドで
遠い街の夢を見る
渚を迷う一羽のカモメ
隣り合った君少し寒そうに
防波堤の向こう足を投げ出した
波が言葉を呑み込んでいく
橋の袂に佇むユーレイ
もう少しだけ
消えないでいたいという
川を流れる幾つもの翳り
手を取り合って
海への還り道
置き去りにされた
赤い林檎が
楓のテーブルで
真実を語りだしそうだ
「嫌いなジョークをひとつ上げると
月の裏側のサンタの話かな」
燃え尽きたゴロワーズ舌先に残して
何か話す事があったような
滲んだ空はどうしよう
触れ合う前に溶け出す
曲がったままのフォトンが
戯れつき水面に消えた
君の眼差しは遠く
灰色の海を眺める
やり直される景色を見てた
砂をはたいて差し出すその手の
温もりだけが現実じみて
このまま二人どこへ帰るのだろう
行き先もわからないまま
黄色い道を不器用に歩く
冷たい町で生きる
繋いだ手を離さないように