畦道 紅い鳥居

夕闇 綿飴雲

折り鶴掛けた願い

解けて散りゆくのを

晦月ほのかに笑い

欠けた枝に変わる

最後の一枚が颪に舞い行けば

境目消えて

今 夜の端からそちらへ踏み込んだ

通りゃんせ

開く市松模様

繋がる 軋む廊下の先へ

意志を持って揺れる蝋燭が

淡く灯す君の横顔

書き換えられた時間

時かけ元通る

今でも神様は

どこかで見張っていると

夜の帳に云う

「隠せやしないからね

浮かぶ月でさえ

僕らを見ているよ」

かざした左手

二つの指の間にそれを挟みこんで

君が唄いだすから

僕は少し戸惑い目を逸らす

そこで待つ月が瞬き

息をのみ口をつぐんだ

半透明

見透かされた不確かさ

茶を啜り君は話した

「夜明け前の月(あれ)が海に落ちて

入れ替わる

誰ひとり気づかずに

さようなら

もしもまた遭えても

二人が同じとは限らない

心の一番深い場所で

名前を見つけて」